絶滅危惧種指定の果物「イワテヤマナシ」
レポーター:枝光 弘味
取材日:2016年9月9日(金)
活動場所:株式会社 樽正本店
取材対象:神戸大学大学院農学研究科(准教授)片山寛則様・株式会社 樽正本店(顧問)石川徹様
住 所:兵庫県神戸市灘区琵琶町3-2-1
兵庫県内の耕作放棄地で、環境省レッドリストの絶滅危惧種に指定されている「イワテヤマナシ」を地元住民らが栽培、そのナシをジャムやシロップなどに加工、販売している会社 樽正本店を知り取材に行きました。
【イワテヤマナシとは】
その名前のとおり、岩手県を中心とする東北地方に分布している野生の梨。一般の梨と比較すると大変小さく、ピンポン球を少し大きくしたほどのサイズです。甘くフルーティな香りと酸味が特徴で、その香りは宮沢賢治の童話「やまなし」で登場するほど。作中で「ああ、いい匂いだな」と記述があります。今では入手しにくい梨です。
【神戸大学との共同開発】
神戸大学大学院 准教授の片山 寛則氏は、日本原産である果物の研究でイワテヤマナシに着目。東北地方の自生梨を収集し兵庫県内の耕作放棄地で接ぎ木をして栽培。保全、研究にと生かされています。また収穫したイワテヤマナシは樽正本店で香り豊かなジャムやシロップにと加工―販売されています。
【樽正本店のこだわり】
ジャムに使用するのは、果物と甜菜糖、レモン汁のみ。 とてもシンプルです。製造現場では機械に頼るのではなく、手作業で一つ一つ丁寧にされていたのが印象的でした。出来上がったイワテヤマナシのジャムを試食すると、通常の梨では感じられない上品な甘い香りの風味に感動。パンにとても合うお味でした。
【丹波の農園見学】
現在、イワテヤマナシを栽培している農園は県内に2か所。今回は丹波市にある農園を見学させていただきました。接ぎ木をして年数が浅い為、まだ実をつけていませんでしたが来年か再来年辺りに期待がもてそうです。樹木は横に成長するので、等間隔に立ち並んでいました。実付きをよくする為、棚農法と呼ばれる技法で枝先を棒にくくりつけ横へと、はわすようにしています。周辺の雑草は、無農薬栽培であるため手作業で抜かれています。
【考察】
絶滅危惧種指定のイワテヤマナシを栽培することで保全や研究活動につなげ、耕作放棄地の解消になること。なにより素材本来の良さをジャムやシロップとして生かす樽正本店のシステムが素晴らしいなと思いました。