平成26年度論文

水環境科(安全科学担当)

水質中の5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)-フェノール(別名:トリクロサン)

松村千里

化学物質と環境 平成25年度化学物質分析法開発調査報告書, p. 78-123(2014)

 水質中のトリクロサンの分析方法を開発した。水質試料を採取した褐色ねじ口瓶にサロゲート内標準を添加し、炭酸カリウムを溶解させ、無水酢酸を添加してアセチル誘導体化を行った。固相カートリッジに通水して抽出し、遠心分離器を使用して脱水した後、ヘキサンで溶出した。濃縮後、シリンジスパイク内標準を添加し、GC/MSで測定を行った。また、同時に、入手可能な3種類の同族体、及びそれらのメチル化体についての分析も可能であった。

4-クロロ-2-メチルフェノール

竹峰秀祐

化学物質と環境 平成25年度化学物質分析法開発調査報告書, p. 154-187(2014)

 水質中の4-クロロ-2-メチルフェノールのpptレベルでの分析方法を開発した。水質試料を塩酸酸性としジビニルベンゼン系の固相抽出カラムに通水後、アセトンで測定対象物質を溶出させる。溶出後、濃縮し、誘導体化(エチル化)を行い、シリンジスパイク内標準(以下、内標準という)を添加した後、GC/MS-SIM法により測定した。また、同時に、2-クロロ-4-メチルフェノール、2-クロロ-5-メチルフェノール、2-クロロ-6-メチルフェノール、3-クロロ-2-メチルフェノール、3-クロロ-4-メチルフェノール4-クロロ-3-メチルフェノール、5-クロロ-2-メチルフェノールの分析も可能であった。

2-メルカプトベンゾチアゾール

松村千里

化学物質と環境 平成25年度化学物質分析法開発調査報告書, p. 635-652(2014)

 大気中の2-メルカプトベンゾチアゾールの分析方法を検討した。酸分解する可能性があることから、長時間の捕集は困難であるため、ガラス繊維ろ紙を用いたハイボリュームエアサンプラーにより短時間で捕集する。捕集した試料をジクロロメタンにより抽出し、誘導体化(メチル化)後、シリンジスパイク内標準を添加してヘキサンで10mLに希釈し、ポリエチレングリコール系のキャピラリーカラムを装着したGC/MSで測定を行う。しかし、大気試料捕集時の分解等により、目標とする制度では分析方法を確立することができなかった。

1,2,5,6,9,10-ヘキサブロモシクロドデカン

羽賀雄紀, 山本勝也, 鶴川正寛

化学物質と環境 平成25年度化学物質分析法開発調査報告書, p. 964-988(2014)

 大気中の1,2,5,6,9,10-ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)を分析する方法を開発した。ダイオキシン類捕集用ハイボリュームエアサンプラーを用いて、サンプリングスパイク内標準を添加した石英繊維ろ紙(QMF)に24時間で約1000 m3の大気を吸着捕集した。QMFはアセトンでソックスレー抽出を行った。抽出液は、液液抽出によりヘキサン転溶し、硫酸シリカゲルカラムでクリーンアップした後、窒素気流下で乾固し、アセトニトリル/精製水(8:2)水溶液で200 μLに定容した。シリンジスパイク内標準を添加した後に、LC/MS/MS-SRM(ESI-)法でα-、β-、γ-、δ-、ε-HBCDの定量を行った。

Polychlorinated biphenyl (118) activates osteoclasts and induces bone resorption in goldfish

Yachiguchi, Koji; Matsumoto, Noriko; Haga, Yuki; Suzuki, Motoharu; Matsumura, Chisato; Tsurukawa, Masahiro; Okuno, Toshihiro; Nakano, Takeshi; Kawabe, Kimi; Kitamura, Kei-ichiro; Toriba, Akira; Hayakawa, Kazuichi; Chowdhury, Vishwajit S.; Endo, Masato; Chiba, Atsuhiko; Sekiguchi, Toshio; Nakano, Masaki; Tabuchi, Yoshiaki; Kondo, Takashi; Wada, Shigehito; Mishima, Hiroyuki; Hattori, Atsuhiko; Suzuki, Nobuo

Environmental Science and Pollution Research, 21(10), 6365-6372 (2014)

ポリ塩化ビフェニル(PCB)#118の魚骨代謝への効果を分析するために、私達は、PCB (#118)投与キンギョのスケール  において血漿カルシウムレベルだけでなく破骨細胞および骨芽細胞の活性を調査した。さらに、PCB (#118)の破骨細胞と骨芽細胞への影響を、in vitroにおいて調査した。性ステロイド類の内生的な効果が無視できる未成熟なキンギョを使用した。PCB (#118)は10ppmの濃度でジメチルスルホキシドに溶解した。PCB (#118)投与(100 ng/g体重)の1および2日後に、破骨細胞および骨芽細胞の活性、および血漿カルシウムレベルを測定した。in vitroでの研究において、 個々のマーカーmRNA発現だけでなく、破骨細胞および骨芽細胞の活性を試験した。2日後で、PCB (#118)投与キンギョの破骨の活性はかなり増大し、この間骨芽細胞の活性は変化しなかった。破骨細胞の活動と対応し、血漿カルシウムレベルは、PCB (#118)投与の2日後にかなり増大した。破骨細胞の活性は、また、in vitroのマーカー酵素活性とmRNA発現に存在した。従って、私達は、PCB (#118)はin vivo および in vitro実験のキンギョの骨代謝を混乱させる、という結論に至った。

大気環境科

Estimate of Regional and Broad-based Sources for PM2.5 Collected in an Industrial Area of Japan

Nakatsubo Ryouhei, Tsunetomo Daisuke, Horie Yosuke, Hiraki Takatoshi, Saitoh Katsumi, Yoda Yoshiko, Shima Masayuki

Asian journal of atomospheric environment, 8(3),126-139 (2014)

 PM2.5の主要な発生源を推定するため、兵庫県姫路市でPM2.5を捕集し、水溶性イオン成分、炭素成分、無機元素成分を測定した。成分濃度データにPositive Matrix Factorizationを適用して主要な発生源と寄与割合を推定するとともに、後方流跡線を用いたPSCF解析により、発生源の位置を推定した。

The contribution of site to washout and rainout: Precipitation chemistry based on sample analysis from 0.5 mm precipitation increments and numerical simulation

Atmospheric Environment, Volume 95,  Pages 165-174(2014)

Masahide Aikawa, Mizuo Kajino, Takatoshi Hiraki, Hitoshi Mukai

抄録:測定地点の地域種 (都市、郊外、田園) ごとにウォッシュ アウトとレインアウトの寄与が異なっていたかどうかを検討するため、 3 つの測定地点の降水量0.5 mmごとの降水化学のデータセットを解析した。都市部におけるウォッシュ アウトの寄与(70% 以上)は他の2種の地域よりも大きかったにも関わらず、NO3 沈着量では地点種に関係なく、レインアウトの寄与はの約 3 分の 1 を占めており、ウォッシュ アウトが3分の2を占めていた。SO42−沈着量について都市部ではレインアウトの寄与が80%以上であったが、郊外および田園地域では、ウォッシュ アウトとレインアウトの寄与がほぼ半々であった。これらの結果については、化学輸送モデルでも同様の結果が得られた。

第5次酸性雨全国調査報告書(平成24年度)

堀江洋佑, 岩崎綾, 木戸瑞佳, 遠藤朋美, 山口高志, 高嶋司, 菊谷有希, 川本長雄, 濱村研吾, 福田裕, 松本利恵, 横山新紀, 北村洋子, 野口泉, 家合浩明, 米谷康治, 野澤直史, 松倉祐介

季刊全国環境研会誌,Vol.39, No.3, Page.100-146 (2014)

抄録:全国環境研協議会による酸性雨全国調査は1991年度から始まり,現在2009年度からの第5次調査を実施している。報告書は, 第5次調査の4年目の2012年度に全国の地方環境研究所52機関で行った,湿性沈着調査66地点,乾性沈着調査52地点の調査結果をとりまとめた。加えて,最近のアジア大陸から排出されるガスおよびPM2.5による大気汚染等の問題にも触れた。

越境大気汚染の過去,現在,今後  酸性雨と越境大気汚染

平木隆年

環境技術,Vol.44, No.2, Page.75-79 (2015)

抄録:日本における酸性雨問題は,越境大気汚染の側面を意識しつつも,関東一円で起こった人体被害が発端となって社会問題化したため,地域汚染としての調査がなされた歴史がある。近年,中国の大気汚染が深刻化し,その影響が日本にも表れ,光化学オキシダント濃度の増加やPM2.5度の増加が見られるようになった。そのため,PM2.5対策として,国内の対策に加えて中国の大気汚染対策を支援する動きが出ている。これまでの日本における越境大気汚染に対する取り組みを紹介し,今後の展望について考察した

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