平成22年度分 大気環境科
論文の内容
建築物等解体工事現場におけるアスベスト飛散監視調査―兵庫県における1996年度から2007年度までの調査結果―
中坪 良平,坂本 美徳,藤原 拓洋,平木 隆年(兵庫県環境研究センター),吉村 陽(兵庫県環境管理局大気課)
環境技術,39(8),480-485(2010)
兵庫県は、「環境の保全と創造に関する条例(兵庫県条例第28号,以下,県条例)」を1995年7月に制定、翌年1月に施行し、建築物等の解体や改修に伴う大気中へのアスベスト飛散防止対策を国に先駆けて実施してきた。筆者らは、大気汚染防止法を含めてこれらの規制の実効性を高めるため、解体等の工事現場において周辺の空気中アスベスト繊維濃度を実測することによって法令の遵守状況を確認している。1996年度から2007年度までの12年間の調査で534件のアスベスト飛散監視調査を実施し,そのうちアスベスト繊維が10本/Lを超えて検出された工事は35件で全件数の6.6%であった.漏えい工事の比率は1996~2004年度までの平均で18%であったが,2005年度は8.5%,2006年度は3.8%と低下傾向を示し,2007年度は5.1%であった.また,35件の中には100本/L超の高濃度漏えい工事が10件(1.9%)あった.除去等の対象となった特定建築材料のうち74%にクリソタイルが,20%にアモサイトが,14%にクロシドライトが使用されていたのに対し,漏えいしたアスベスト種ではアモサイトが最も多く66%を占め,次いでクロシドライトが34%と多く検出された.クリソタイルについては,特定建築材料に多用されているにもかかわらず17%と少数であった.
デジタル粉じん計によるアスベスト漏えい監視方法の検討
中坪 良平,坂本 美徳,藤原 拓洋,平木 隆年(兵庫県環境研究センター),吉村 陽(兵庫県環境管理局大気課),藤長 愛一郎(大阪府立工業高等専門学校)
環境技術,39(9),557-563(2010)
建築物解体等工事現場のアスベスト漏えい監視調査において、市販のデジタル粉じん計により集じん機排出口付近の粒子数濃度を測定し、集じん機の排気に含まれる粒子数濃度の状況を把握するとともに、同時に測定した位相差顕微鏡による繊維状粒子濃度の結果を比較することにより、デジタル粉じん計によるアスベスト漏えい監視方法を検討した。集じん機の排気は,HEPAフィルターで集じんされているため,一般的な大気環境よりも粒子数が少なくなると推測されるが,なんらかの要因で排気中に粒子が混入し,一般的な大気環境と同程度の粒子数になることもあった.また,粒径が小さいほど検出される粒子数の範囲が広く,調査によるばらつきが大きくなる傾向を示した.アスベストが10本/L以上漏えいした場合,デジタル粉じん計による粒子数と位相差顕微鏡によるアスベスト濃度との間には有意な相関がみられなかったが,特異な事例を除けば,5.0μm以上の粒子数と総繊維濃度に有意な相関がみられた.吹き付け剤等に含まれる繊維状粒子が作業場内から漏えいしているとすれば,5.0μm以上の粒子を測定することで,モニタリングマニュアルで計数対象となるアスベストの漏えい状況を概ね把握できると考えられる.