平成25年度 論文
水環境科(安全科学担当)
粒状活性炭に吸着されたペルフルオロオクタン酸の加熱時の挙動
竹峰 秀祐, 高田 光康, 山本 周作, 渡辺 信久, 松村 千里, 藤井 滋穂, 田中 周平, 近藤 明
分析化学, Vol. 62, No. 2 p. 107-113 (2013)
活性炭(GAC) に吸着されたPFOA の加熱時の挙動について基礎的な知見を得るため,既知量のPFOAをGACに吸着させた試料を電気炉で加熱する実験を行った.また,比較としてPFOA 原体の過熱実験を行った.LC/MS/MS,IC,及びHe-rfBD-AES でサンプルの分析を行い,PFOA の挙動や形態の変化,フッ素の収支から,PFOA の加熱時の分解挙動について知見を得ることができた.
大気環境科
環境省環境研究総合推進費終了研究等成果報告書 C-1005 大気中粒子状物質の成分組成及びオゾンが気管支喘息発作に及ぼす影響に関する疫学研究(3)大気中粒子状物質の日平均成分濃度の解析に関する研究
平木 隆年,中坪 良平,常友 大資(兵庫県環境研究センター)
環境省環境研究総合推進費(C-1005)終了研究等成果報告書, 56-88 (2013)
環境省環境研究総合推進費の支援を受け,平成22年度から平成24年度まで,兵庫医科大学及び環境計測株式会社と共同で「大気中粒子状物質の成分組成及びオゾンが気管支喘息発作に及ぼす影響に関する疫学研究」を実施した.当研究センターは,「サブテーマ(3)大気中粒子状物質の日平均成分濃度の解析に関する研究」を担当した.サブテーマ(3)では,兵庫県姫路市において,粒径別の粒子状物質及びガス状物質,粒子状物質中の成分濃度を測定し,粒径別粒子状物質の日平均成分濃度の特徴や発生源について解析した.
粒径別粒子の主要成分とガス状成分を並行測定し,半揮発性イオン成分の粒子-ガス分配は,季節により大きく異なっていた.また,PM2.5の質量濃度と主要成分濃度の関係を調べたところ,PM2.5中の硫酸イオン(SO42-)とアンモニウムイオン(NH4+)は,PM2.5の質量濃度と明瞭な相関関係がみられ,PM2.5高濃度事象に及ぼす影響が大きいことが示された.一方,炭素成分,特に元素状炭素(Elemental Carbon:EC)は,PM2.5が高濃度になっても,ある程度の濃度にとどまっていた.
PM2.5の成分濃度に,多変量解析の一種であるPositive Matrix Factorization(PMF)解析を適用し,PM2.5に寄与する発生源因子と寄与割合を推定した.その結果,PM2.5に影響を及ぼす発生源因子として,国外からの移流の影響が考えられる硫酸系二次粒子や廃棄物焼却を表す因子,また,調査地点周辺の影響が考えられる自動車や重油燃焼,石炭燃焼を表す因子が推定された.PM2.5への寄与率が最も高かった因子は硫酸系二次粒子を表す因子で,次いで自動車,廃棄物焼却を表す因子の寄与率が高かった.
微小粒子状物質(PM2.5)高濃度事例の解析について
中坪 良平(兵庫県環境研究センター)
あおぞら, 40, 1-8 (2013)
微小粒子状物質(PM2.5)による大気汚染について,全国の常時監視結果及び県内の常時監視結果を用いた解析により,高濃度時の汚染要因について考察した.全国の常時監視局のPM2.5濃度の経度分布を解析したところ,年平均値は全国的に同程度の濃度範囲に分布していたが,年間98%値及び最大値は西日本で高くなる西高東低の分布を示したことから,西日本では高濃度事例が多発し,濃度が高くなりやすい傾向があると考えられた.また,濃度分布の時系列変化を確認したところ,全国的に高濃度を示す期間,中四国・九州で高濃度を示す期間,また関東だけで高濃度を示す期間などがあり,PM2.5は全国規模の汚染と都市域レベルで生じる地域的な汚染の両方が考えられた.平成24年度に県内で高濃度を示した期間(5月9日及び7月28日)におけるPM2.5濃度の測定値と気象データ及び後方流跡線解析結果から,5月の高濃度事例については,中国東部沿岸部からの汚染気塊が気象条件によって日本へ到達することにより生じた可能性が示唆されたが,7月の高濃度事例については,中国からの気塊の影響が小さい状況下において,夏季日中の高温多湿な条件下でPM2.5が二次的に生成されたことにより生じた可能性が示唆された.